オバマ大統領とイスラム国ISIL壊滅 国連総会演説(14)

オバマ大統領が2014年9月24日(米国時間)に国連総会で演説を行いました。米国ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されたその全文(全5ページ)を読んで、オバマ大統領がどのようなトピックスについてどのようなメッセージを全世界から集まった代表者たちに向けて発信したのか、見出しを付けながらその一端を以下に紹介します。

 

The Whie House

Office of the Press Secretary

September 24,2014

 

United Nations General Assembly Hall

New York City, New York

 

題目:Remarks by President Obama in Address to the

         United Nations General Assembly

       「国連総会でのオバマ大統領の演説」

 

<当ブログによるオバマ大統領の演説の分解> その6

 

 

      注:青字の部分は当ブログによる補足、黒字は原文を

     抜粋・和訳したものです。

 

「イスラム国ISIL(アイスル)の壊滅」

 

オバマ大統領の演説はその核心に入っていきます。

 

テロに立ち向かうためには次の4つの分野に照準を当てる必要がある。

 

(1)イスラム国(ISIL)は弱体化させ最後は壊滅させなければならない。このテロ集団はイラクとシリアにおいて手当たり次第にテロ行為を犯した。このようなテロは許されるものではない。米国は幅広い連携の下にこのようなテロ集団を壊滅させる。米国は空爆を行うが、地上戦に参加することはない。すでに40カ国を超える国々が連携への参画を表明した。イスラム国ISILに参加したものは今からでも遅くはないので戦場から立ち去るように。

 

(2)世界にとって、とくにイスラム世界にとって、アルカイダやイスラム国(ISIL)を拒否するときである。また、世界の偉大な宗教はいずれもその信仰と現代の多様な文化の世界とを調和させる任務を有する。子供は憎しみを持ちながら生まれるのではない。子供は憎むように教育されてはならない。人がユダヤ教徒、キリスト教徒あるいはイスラム教徒ということで、人々に害を及ぼすように説教する聖職者(clerics)を許してはならない。暴力を身上とするイデオロギーで蝕まれた若者の心(young mind)という根深い起因によって引き起こされる戦争は皆無にしなければならない。世界経済から富を蓄え、子供に世界経済を破壊しろと教える輩に資金を流し込むという偽善は終わりを迎えるときだ。インターネットなどを通したテロリストの宣伝は若者を外国での戦争に駆り立てまた未来のある学生を爆弾自殺テロに仕向ける。若者には別のビジョンを提供しなければならない。また、どの宗教も内部からの過激主義者たちによって攻撃をされたことがある。人々は世界の偉大な宗教の中心にある価値を高めることをすべきである。イスラム国ISIL、アルカイダやボコハラム(Boko Haram/訳注:ナイジェリアのイスラム教スンニ派のジハード組織のイデオロギーは対決を続ければ消滅していくものだ。イスラム世界で平和を推進する新しいフォーラムの目的は、Sheikh bin Bayyah氏訳注:イスラムによると「戦争には戦争を宣言する。その結果、平和に平和が生まれる(We must declare war on war, so the outcome will be peace upon peace)」。イギリスの若いイスラム教徒たちはテロリストの宣伝に対して、「イスラム国ISILは虚偽のイスラムだ」と宣言した。中央アフリカ共和国に集まったキリスト教とイスラム教の指導者はイスラム教の指導者から次の言葉を聞いた。「政治はわが国の信者を分断しようとする。しかし、宗教は憎しみ、戦争や敵対の原因となってはいけない」。本日、後ほど安全保障理事会は暴力を用いる過激主義に対抗するという各国の責任を強調する決議を採択する。来年はそれぞれの国においてどのような対抗策を実行したか発表しあうことを求めたい。

 

(3)闘争とくに派閥間の闘争のサイクルに対応しなければならない。宗教の中で起こる戦争は新しいことではない。キリスト教では数世紀に渡る激しい宗派間の闘争があった。今日、人類の悲痛の源となっているのはイスラム界での暴力である。中東で起こっているスンニ派(Sunni)とシーハ派(Shia)の間の代理戦争とテロによって引き起こされている破壊を今や認識すべきときである。また、政治の、民衆の、宗教の指導者は派閥の争いを拒否すべきときである。このような争いに勝利者はいない。シリアの残忍な市民戦争ではすでに20万人近くの人々が殺された。イラクは混沌の世界に戻ろうとしてる。しかし、よい兆候も現れている。バグダッドでは新しい政府が誕生した。レバノンでは戦争を引き起こそうとする人々を拒否する政党が存在する。次には休戦が必要である。とくにシリアでは休戦が一層求められる。米国は、イスラム国ISILとアサド政権(the Assad regime)に対抗できるようシリアの反対勢力(the Syrian opposition)を訓練し装備を供給している。しかし、シリアの市民戦争(Syria's civil war)の恒久的な解決策はシリア市民の願いに答える政権の誕生でしかない。現在の狂気の世界が終わらないはずが無い。米国はこの地域に残り努力を継続する。

 

 (4)アラブとイスラムの世界は人々の素晴らしい可能性とくに若者の可能性(potential)に焦点を当てるべきだ。私はイスラム世界の若者に今、直接伝えたい。君たちは素晴らしい伝統の中で育ってきた。無知ではなく教育(education, not ignorance)、破壊ではなく革新(innovation, not destruction)、殺人ではなく生命の尊厳(the dignity of life, not murder)という伝統の中で育った。この伝統から君たちを引きずり出そうとする者たちはこの伝統を裏切るものたちである。女性が政治や経済にまともに参画できる国では、社会が成功する。それが女性の国会、平和活動、学校や経済に参画することを支持する理由である。若者にとって国家の統制(the dictates of a state)や過激主義者の誘惑(the lure of an extremist)しか選択肢がないならば、どんなテロ対抗策もうまくいかない。しかし、意見を表明でき、より良い生活のために平和裏に取り組むことができる真の市民社会であるならば、テロ以外の機会が劇的に増加する。このような改善は伝統と信仰を損なうことなく実現できる。イラクの例がそうである。ある若者が図書館を始めた。「イラクの遺産(legacy)を皆の心に伝えるためである」とその若者はいう。様々な例が、チュニジア(Tunisia)、セネガル(Senegal)、マレーシア(Malaysia)やインドネシア(Indonesia)で見られる。

 

結局、分派主義(sectarianism)や過激主義(extremism)を拒否することは世代に渡る中東の人々自身の任務である。外部からの力は役に立たない。しかし、米国は礼儀をわきまえた建設的なパートナーであり続ける。米国はテロリストの安全地帯を絶対に認めない。また、他国を占領することはしない。米国は、テロリズム対抗の連携の構図を作り上げながら米国と同盟国への脅威に対しては断固とした行動をとる。

 

オバマ大統領が次にはイスラエルの問題に話題を移します。

 

(次のブログに続く)

 

<原文の出典>

ホワイトハウスのウェブサイト

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/09/24/remarks-president-obama-address-united-nations-general-assembly

 

 

以上