ひとくちメモ weapons-grade Plutonium と reactor-grade Plutonium

原子炉から生成されるプルトニウム239は核分裂性物質で、その用途は何と言っても原爆、核弾頭などの核兵器です。生成されるプルトニウムが核兵器の製造に問題がないかどうかは、同時に生成されるプルトニウム240など同位体の含有量で左右されることが知られています。

 

プルトニウム240は自発核分裂という現象を起こして中性子を放出するため、核兵器の制御に問題を生じます。プルトニウム238は崩壊して発熱します。またプルトニウム241はアメリシウム241に崩壊して強力なガンマ線を放出します。

 

そのため、兵器の作製にはプルトニウムの有害な同位体(質量数が238、240と241)の含有量が少なくプルトニウム239の含有量が高いことが必要です。兵器グレードプルトニウム(weapons-grade Plutonium)は、プルトニウム239を約93%含むプルトニウムと決められています。93%よりも含有量が低いと、有害なプルトニウム同位体によって、上記の自発核分裂による中性子の放出、崩壊による発熱とガンマ線の放出が核兵器作製の妨げになる度合いが高まります。

 

商用に発電の目的で使用されている原子炉では兵器グレードプルトニウムは生産できません。プルトニウム240などを多く含む原子炉グレードプルトニウム(reactor-grade Plutonium)というのが生成されます。原子炉グレードプルトニウムはプルトニウム239の含有量が80%より低いプルトニウムです。なお、80%~93%のものは、燃料グレードプルトニウム(fuel-grade Plutonium)と呼ばれています。

 

日本では商用の原発から生成された原子炉グレードプルトニウムが蓄積されています。9.3トンのプルトニウムが国内に保管され、海外(プルトニウム再処理を日本が依頼している英国とフランス)で35トンが処理中のようです。そのため、日本は核兵器製造の準備のためにプルトニウムを蓄積しているのではないかという懸念が出てきます。プルトニウムを使う原子爆弾は8キログラムほどのプルトニウムで作製できるということであり、その気になれば大変な数の原子爆弾を製造できるプルトニウムの量ではあります。

 

一応、核兵器には適さないプルトニウムが日本に蓄積されているわけですが、原子炉グレードプルトニウムから核兵器が作製できないかというとそうではないと言うことです。その気になれば作製が可能です。ただ、作製が面倒になるだけであって、作製技術に長けていないテロリストでも原子炉グレードプルトニウムを盗み出せば、核兵器を作製することが可能になるということです。プルトニウムがふんだんに蓄積されている日本としては、物騒な話です。ただ、テロリストの立場からは、原子炉グレードのプルトニウムを盗み出すよりも高濃縮ウランを盗み出すほうが、核兵器を作りやすいということが言われています。

 

なお、兵器グレードのプルトニウムを製造するためにはその目的で設計された専用の原子炉が必要になります。第2次世界大戦で米国が原爆に使うプルトニウムを製造するために3機の原子炉を設計し稼動させました。そのうちの一号機がB原子炉(B reactor。訳注:熱出力は 250MWt)と呼ばれる原子炉です。これが世界初の大規模な原子炉の誕生でした。この原子炉から取り出された6.2キログラムのプルトニウムが詰め込まれた原爆が長崎に投下されたと言うことです(広島に投下された原爆はウラン全体が64キログラムでそのうち核分裂性物質のウラン235が1キログラム弱と言うことです)。

 

付記:広島に投下されたウラン235を1キログラム弱含んだ

   原爆は10万秒の1秒と言う瞬間に爆発を終え、原子炉

   では1キログラムのウラン235が8時間かけて核分裂

   するように設計されているそうです。

 

付記:現在商用の原子炉に使われているウラン核燃料の放射能

   はその程度が軽微ですが、原子炉グレードのプルトニウ

   ムを含むMOX燃料はプルトニウム同位体が中性子を放

   射したり、崩壊熱を発生したり、挙句は強力なガンマ線

   を放出するということであり、放射線被爆に対する安全

   対策が必要です。日本におけるMOX燃料の発電への商

   用化の計画(プルサーマル計画)は安全対策がとられて

   いるとしても、基本的にはMOX核燃料による放射線被

   爆と言う新たな危険が原子炉を取り巻く従来からの危険

   に重ねられることになります。

 

<参考資料>

1.Canadian Coalition for Nuclear Responsibility の

  ウェブサイト

www.ccnr.org/plute.html

 米国エネルギー省から公表の資料

"Nonproliferation and arms control assessment of weaons-usable fissile material storage and excess Plutonium disposition alternatives"

 

2.B Reactor 博物館(米国ワシントン州)のウェブサイト

http://www.b-reactor.org/

 

以上